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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)10295号 判決

神奈川県横須賀市追浜本町一丁目一〇五番地

原告

株式会社ケープ

右代表者代表取締役

花房志郎

右訴訟代理人弁護士

斎藤方秀

木村修治

大阪府八尾市太田新町二丁目四一番地

被告

三和化研工業株式会社

右代表者代表取締役

岡田禮一

右訴訟代理人弁護士

竹内靖雄

右輔佐人弁理士

山本孝

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告は別紙物件目録(一)記載の物件を製造し、販売してはならない。

二  被告はその所有する前項記載の物件を廃棄せよ。

三  被告は原告に対し金二七〇万円及びこれに対する平成四年一一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  訴訟費用は被告の負担とする。

第二  事案の概要

一  原告製品

原告は、医療機器類の製造、販売等を目的とする会社であり(弁論の全趣旨)、別紙物件目録(二)記載の床ずれ防止用の交互膨縮型エアマットレス(「原告製品」という。)を製造し、これを主として医療器具を扱う代理店を通じて全国の病院、老人ホーム等に「スタンダードマット」の商品名で販売している(争いがない。)。

原告製品のエアセルは一本おきに二系統(A系統とB系統)に分けられ(別紙図面1)、エアポンプ(送風機)を操作すると、ポンプ内の切り替え弁が作動して、一系統のみの送風チューブ(例えばA系統)に接続して送風が行なわれる。そして、一定の時間(約五分)が経過すると、切り替え弁が回転して、他の系統の送風チューブ(例えばB系統)に送風が切り替わり(別紙図面2)、送風の終わった前の系統(例えばA系統)のエアセル内の空気は、排気孔から抜けていく。このように送風と排気が約五分ごとに繰り返されることにより、エアセルの交互膨張と縮小が繰り返され、身体の保持圧力が徐々に切り替わり、床ずれの防止及び治療となる(甲二五、証人竹田)。

二  被告の行為

被告は、試験管立・篭等理化学用具の製造販売等を目的とする会社であり、平成四年五月から別紙物件目録(一)記載の床ずれの防止及び床ずれ治療を目的とするエアマットレス(商品名「ヘルシーマット、セルタイプ」、以下「被告製品」という。)を製造、販売している(争いがない。)。

三  請求の概要

原告製品の形態及び色彩は、遅くとも被告製品の製造・販売開始時点である平成四年五月には不正競争防止法(平成五年法律第四七号、以下同じ)二条一項一号にいう「商品等表示」として需要者の間に広く認識されるに至り、被告製品の形態及び色彩は原告製品の形態及び色彩と類似し、原告製品と混同を生じることを理由に、〈1〉被告製品の製造・販売の停止及び〈2〉被告所有の被告製品の廃棄並びに〈3〉被告製品の製造・販売により原告が被った損害二七〇万円(被告製品の製造・販売により被告の得た利益を商標法三八条一項の類推適用により原告の損害と推定)の賠償を請求。

四  主な争点

1  原告製品の形態及び色彩が、いわゆる商品表示性及び周知性を取得したか。

2  被告製品の形態は原告製品の形態に類似するか。両者に混同が生じるか。

3  1、2項が肯定された場合、被告が賠償すべき原告に生じた損害の金額。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(原告製品の形態及び色彩が、いわゆる商品表示性及び周知性を取得したか)

1  原告の主張

(一) 原告製品の使用時における形態及び色彩は、別紙物件目録(二)に記載のとおりであり、横長で円錐台形状(鼓状)のエアセルを、縦方向に一六本配列し、そのエアセルをホックでベースシート上に固定し、右エアセル、ベースシートはいずれも茶色に彩色されているところに特徴がある。

原告製品は、昭和六二年ころから、原告がそれまで製造販売していたエアマットレス「リップルベッド」(リップルベッドの詳細については後述する。)を改良して、円錐台形状(鼓状)のエアセルを縦方向に一六本配列し(リップルベッドは一四本)、エアセル、ベースシートに茶色の彩色を施して、「スタンダードマット」という商品名を付した製品である。

エアセルを一六本としたのは、一四本である場合に比べ、個々のエアセルの寸法を小さく設定することができるからである。これは、交互膨縮型エアマットレスメーカーの草分け的存在である原告の長い経験とノウハウを生かしたもので、より日本人の体型に合うように改善されたものである。これにより、使用者の体を低く支えることができるようになり、それだけ看護者の処置のしやすさが増大するとともに、マット(エアセル)が体に接触する部分の面積がそれだけ少なくなるので、寝心地がより良くなり、除圧の効果もより期待できるようになったのである。

また、原告は、リップルベッド及び原告製品のエアセル及びベースシートを茶色に彩色しているが、エアマットレスのエアセル及びベースシートの色彩として茶色を採用したのは、原告がわが国において最初であり(なお、エアマットレスの彩色は、各社においていわばコーポレイトカラー的に各自の特徴を出していて、原告が当初から茶色を採用していることは業界では知れ渡っている。)、これにより原告製品の出所識別が容易になっている。

そして、原告は、商品展示会で原告製品を展示紹介したり、原告製品紹介のためのパンフレットをカラー印刷にして、原告製品の全体像を大きく撮影したうえ、エアセルの形状も詳しく図示、説明するなど、全国の取扱代理店、販売店等を通じて、原告製品の形態及び色彩を広告宣伝し、積極的に販売活動を展開してきた。その結果、原告製品は交互膨縮型のエアマットレス部門ではわが国でトップシェアを占めるまでに普及した。それとともに、原告製品は、介護用品を広く紹介する公的な手引き書等にも、交互膨縮型エアマットレスの代表的な商品として、度々カラー写真により商品の形態及び色彩がありのまま掲載され、そして「エアセルは端部が太く、中央部が細くなっています。このため、体の中心部に余計な負担をかけません。」などと技術的機能の詳細な説明も付された上で紹介されるまでになった。そして、公的な病院、施設等での使用実績も好評であったところから、各地の地方公共団体でも、エアマットレス商品の入札にあたっては、ケープ(原告)のスタンダードマットそのもの、あるいはこれと同等のものと指定されるようになっており、原告製品はまさにエアマットレスの代名詞的な存在にまでなっている。このようにして、原告製品は、その使用実績に裏付けられて全国的に普及し、原告は床ずれ防止及び治療用エアマットレスの製造販売について日本における草分け的な存在となり、リップルベッドが主力製品であったころから茶色に彩色した商品を製造販売をしてきたこともあって、原告製品の形態及び色彩は、原告の商品であることを示す表示として需要者の間で周知性を獲得していた。

(二) 被告は、原告が、英国ターレイ社から床ずれ防止及び治療のためのエアマットレスを輸入し、それを「リップルベッド」の商品名で販売していたとし、そのほか株式会社岡島産業(以下「岡島産業」という。)、ドリーム特販株式会社(以下「ドリーム特販」という。)、及び帝国臓器製薬株式会社(以下「帝国臓器」という。)が「リップルベッド」と同一の製品を過去に販売していたか現に販売しており、「リップルベッド」は、原告が原告製品の形態上の特徴として主張するところをほとんど備えており(相違点は、原告製品のエアセルが一六本であるのに対し、「リップルベッド」のエアセルが一四本である点のみである。)、また、エアセルの彩色も茶色で原告製品と一致するから、結局、原告製品は英国ターレイ社製品の模造品に過ぎず、原告製品はその形態及び色彩自体で他人の商品と識別できるような商品表示性を取得していないと主張する。また、被告は、原告の「リップルベッド」のカタログや、岡島産業、ドリーム特販の前記各エアマットレスのカタログに、製造元として英国ターレイ社が記載されていたり、これらの商品が英国ターレイ社が新しく設計した床ずれ予防、治療システムである等の記載があることを指摘し、リップルベッドや、岡島産業、ドリーム特販のエアマットレスが英国ターレイ社製であること、あるいは少なくともそのように表示されていたことは明らかであるから、リップルベッド等と酷似する原告製品の形態及び色彩が、原告の商品たることを示す表示とはなり得ないと主張する。

しかし、原告が「リップルベッド」として販売した商品は、英国ターレイ社製ではなく、原告独自の製品である。すなわち、英国ターレイ社製のエアマットレスは、もともと青色に彩色された塩化ビニール製の製品であった。原告代表者は、かつて英国系の商事会社ドッドウェル&カンパニーリミテッド日本支社(以下「ドッドウェル」という。)に在籍していた当時、これを輸入しようとしたが、故障が発生したので、英国ターレイ社の承認のもとに、原告代表者が独自にエアマットレスを企画・開発し、これを英国ターレイ社から輸入した送風機と組み合わせて、リップルベッドという商品名で販売したのである。その後、ドッドウエルの厚意で、最終的に原告会社が販売権を承継することができた。岡島産業、ドリーム特販、及び帝国臓器が販売している被告指摘のエアマットレスは、原告の製造にかかるエアマットレスと、英国ターレイ社製の送風機を原告から購入して販売しているものであり、原告自身あるいは岡島産業、ドリーム特販、及び帝国臓器を通じて販売しているエアマットレスには、原告の製造にかかる商品であることを明示するラベルが付されている(帝国臓器販売の商品については甲第二号証の1、その余の会社が販売する商品については甲第二号証の2)。なお、岡島産業は昭和六〇年六月ころ倒産し、ドリーム特販は原告が昭和六一年一一月ころ原告製品を新発売し、英国ターレイ社からの送風機の輸入を中止すると、主力商品を原告製品に切り替えた(ただし、同社の顧客からの特別注文、売却先からのメンテナンスの依頼により、原告がリップルベッドの名称で販売している商品の在庫がごく少量残存している。なお、同社の病院関連事業部は既に廃止されている。)。また、帝国臓器は、元来、原告から英国ターレイ社製の送風機と、原告がリップルベッドの名称で販売している商品を購入して、「リップルベッド」の商品名で販売していたが、その後昭和五七年一一月ころ、送風機のみを独自商品に切り替えるにあたり、商品名を「RBエアマットテイゾー」と変更し、これに伴い、従来使用していた甲第二号証の2のラベルを、甲第二号証の1のものに変更した。

たしかに原告がリップルベッドとして販売していた商品のカタログや、岡島産業、ドリーム特販のエアマットレスのカタログには被告指摘の記載がある。しかし、原告が英国ターレイ社が製造していた送風機を輸入していたことは間違いないし、エアマットレスについても、同社の承認を得て、同社が開発した床ずれ予防、治療用のエアマットレスとほぼ同じ設計のエアマットレスを製造し、同社と同じ商品名で販売していたから、そのような趣旨で右カタログを作成したものであり、岡島産業、ドリーム特販のカタログも、原告がリップルベッドの名称で販売していた商品のカタログを大部分利用したことから、同趣旨の記載となったものである。

そして、原告製品と原告がリップルベッドの名称で販売していた商品は、エアセルの本数が、前者は一六本であるのに対し、後者は一四本である点で相違する。また、後者では、白色の送風チューブがエアマットレスの上部に、縦方向に直線で目立つような状態で据え付けられているのに対し、前者では、全く目立たない位置に送風チューブが据え付けられている点でも相違する(これにより、美感が改善され、移動の際にチューブを持つことによる損傷を防ぐことができる。)。このように、原告製品と原告がリップルベッドの名称で販売していた商品には、外観上明白な相違点が存在するから、被告主張の点をもって、原告製品の商品表示性を否定することはできない。

2  被告の主張

(一) 不正競争防止法二条一項一号にいわゆる「商品等表示」とは、取引者又は需要者が、商品に付されている表示自体により、特定人の製造販売にかかる商品であることを認識することができ、これと第三者の商品とを区別するに足りるいわゆる自他識別機能を備える表示をいうものであり、したがって、商品の形態が、商品等表示と認められるためには、少なくとも、商品の形態それ自体で他人の商品と容易に識別しうるような独自の特徴を有することが必要である。

また、商品に施される彩色、ことに単色の彩色は、それ自体独立して「商品等表示」たりえないというべきであり、仮に右「商品等表示」たりえるとしても、その色の商品を見る者はだれでもただちに特定の者の商品だと判断するに至った(セカンダリーミーニングを取得した)場合とか、その彩色をすれば、だれでもただちに特定の者の商品であると判断する(トレードネームとなった)など、その彩色が他人の商品と極めて密接に結合し、出所表示の機能を果たしているような場合にのみ、「商品等表示」として保護されるに過ぎない。

(二) 原告会社は、昭和五六年四月一日、ケープトレーディングリミテッドと称する有限会社として設立されたが、昭和六〇年に株式会社に組織変更し、ケープトレーディング株式会社となり、さらに平成元年に現商号「株式会社ケープ」に変更している。帝国臓器は、ケープトレーディングリミテッド設立以前、遅くとも昭和五五年には、エアセルタイプで交互膨縮型、エアセルの形が円錐台形状(鼓型)、エアセルの彩色が茶色のエアマットレスを「リップルベッド」の商品名で販売していた。このエアマットレスは、原告が原告製品の形態上及び色彩上の特徴と主張するものをほとんど備えている(ただし、エアセルの本数は一四本である。)。また、兼松エレクトロニクス株式会社(以下「兼松エレクトロニクス」という。)は、昭和五四年には、エアセルタイプで交互膨縮型、エアセルの形が円錐台形状(鼓型)のエアマットレスを「アルファベッド」の商品名で販売していた。このエアマットレスは、原告主張の色彩上の特徴は備えていないが(エアセルの彩色は青である。)、形態上の特徴はほとんどを備えている(ただし、エアセルの本数は一四本である。)。また、有限会社メディカ商会(以下「メディカ商会」という。)も、昭和五五年ころには、エアセルタイプで交互膨縮型、エアセルの形が円錐台形状(鼓型)のエアマットレスを「メディカマット」の商品名で販売していた。このエアマットレスは、彩色及びエアセルの本数については不明であるが、原告主張の形態上の特徴をほとんど備えている。なお、これらの商品はいずれも外国製である。

原告は、有限会社当時から、英国ターレイ社から、床ずれ予防・治療のためのエアマットレスを輸入し、右マットレスを「リップルベッド」という商品名で販売していた。このリップルベッドは、横長で円錐台形状(鼓型)のエアセルを、縦方向に配列し、そのエアセルをホックでベースシート上に固定しており、原告主張の形態上の特徴をほとんど備えている(相違点は、エアセルの本数が、原告製品では一六本であるのに対し、「リップルベッド」では一四本である点のみである。)。また、原告が輸入販売していた「リップルベッド」は、原告主張の色彩上の特徴である茶色に彩色されている。そして、英国ターレイ社製のエアマットレスは、岡島産業(商品名「リップルエアーマットレス」)、ドリーム特販(商品名「リップルベッド」)及び帝国臓器の各社により、過去に販売され、また、倒産した岡島産業を除き、現在も販売されている。なお、帝国臓器は、いわゆるリップルベッドと規格が一致するもののほか、エアセルの本数が一二本、二一本、二二本、二六本であるほかは、原告主張の形態及び色彩上の特徴を全て備えているエアマットレスを販売している(帝国臓器の一連の商品は「RBエアーマットテイゾー」の名称が付されている。)。

このように、原告製品は、原告会社が従前から輸入・販売し、現在も輸入・販売している英国ターレイ社製のエアマットレスの形態及び色彩をそっくりそのまま模倣し、ただエアセルの本数を変えただけのものに過ぎず、何らの独創性もない商品である。したがって、原告製品はその形態及び色彩自体で他人の商品と容易に識別しうるような独自性を全く有していない。原告の前身である有限会社が設立される以前から、帝国臓器や兼松エレクトロニクス、メディカ商会により前記のようなエアマットが販売されていたことも併せ考えると、このことはさらに明らかである。よって、原告製品は、その形態及び色彩において、長年継続的かつ排他的・独占的に使用されてきたものではなく、商品表示性を取得していない。

(三) 原告は、原告がリップルベッドという商品名で販売しているもののうち、エアマットレスは、原告が独自に企画製造したものであり、送風機のみを英国ターレイ社から輸入したものであると主張し、岡島産業、ドリーム特販、帝国臓器が販売する前記各商品も、原告がリップルベッドという商品で販売していたもの、つまり原告が製造したエアマットレスと、英国ターレイ社製の送風機を組み合わせたものを原告から購入したものであると主張する。

しかし、いわゆるリップルベッドについての原告カタログには、英国国旗が記載されている上、「製造元英国ターレイ社」「輸入総発売元ケープトレーディング株式会社」「床ずれに対する予防、治療の研究成果を踏まえ、専門的な立場で技術開発に取り組んできた英国ターレイ社が、新しく設計した床ずれ予防・治療システムです。」との記載があり、岡島産業の「リップルエアマットレス」のカタログには、「MADE IN ENGLAND」と明記され、また、「英国ターレイ社が、特に日本の療養者向けに新しく設計したエアーマットレスです。」と記載されており、ドリーム特販の「リップルベッド」のカタログには、「製造元英国ターレイ社」「販売元ドリーム特販株式会社」「英国ターレイ社が、日本における病院・施設等のご意見や、ご要望を反映し、特に日本向けに新しく設計した理想的なエアーマットレスです。」との記載があるし、帝国臓器の「RBエアーマットテイゾー」のカタログにおいて、国産の製品にはその旨表示があるのに、エアセルが一四本のものにはそのような表示がない(詳しくは、別紙一覧表参照。)。また、原告会社を取材した新聞記事(甲第二一号証)によれば、原告代表者は英国ターレイ社製エアマットの輸入に賭け、有限会社ケープトレーディングリミテッドを設立し、やがて品質や割高な輸入価格に満足できなくなり、一九八七年(昭和六二年)に自社開発製品の販売に踏み切ったとされている。

右の諸事実からみて、原告がリップルベッドの名称で販売していた商品、岡島産業、ドリーム特販、及び帝国臓器が販売する前記各商品はいずれも英国ターレイ社製であることが一見して明らかであり、そうでないとしても、原告や岡島産業、ドリーム特販、及び帝国臓器は、これらの商品が英国ターレイ社製のエアマットレスであることの認識を与えるべく、その旨の、あるいは、それを窺わせる表示をして営業販売活動を継続していたのであり、取引者又は需要者は、これらの商品について英国ターレイ社製であるとの認識を持ちこそすれ、原告の企画製造にかかる商品である旨の認識を持ち得ないことはいうまでもない(不正競争防止法二条一項一号にいう商品等表示に該当するか否かは、取引者又は需要者に対して表示された事実によって判断されるべきもので、実際にその商品がだれによって製造されたかは問題でない。)。原告やその前身である有限会社ケープトレーディングリミテッド、岡島産業、ドリーム特販、及び帝国臓器のカタログにはこれらの商品が英国ターレイ社製であることを示すかのような記載があるが、実はそれらは嘘で、実際には有限会社ケープトレーディングリミテッドあるいは原告が独自に企画製造したものであるとでも説明すれば、需要者としてもこれらの商品が有限会社ケープトレーディングリミテッドあるいは原告の製品であるとの認識を持ち得るであろうが、そのような説明がされるはずもない。

(四) 原告は、原告がリップルベッドの名称で販売していた商品、岡島産業、ドリーム特販、及び帝国臓器が販売する前記各商品に付されたラベルに、原告の製造であることが明示されている旨主張する。しかし、そのようなラベルが実際に付されているかどうか疑問であるばかりでなく、そのラベルと称するものは、英語で

PRODUCED BY CAPE TRADING LTD. UNDER LICENCE FROM Talley Medical Equipment Ltd.

と記載されているが、日本国内の取引者又は需要者がその内容を理解できるかは疑問であり、仮に理解できたとしても、CAPE TRADING LTD.の日本における所在地が記載されていない以上、日本法人である原告が企画製造した商品であるという認識を持つことはできない。また、原告がリップルベッドの名称で販売していた商品の送風機(送風機が英国ターレイ社製であることは原告も認めるところである。)に「Talley Ripplebed」とさざ波を示すようなデザインで表示されていることから、右表示は英国ターレイ社製のリップルベッドであることを示す独特のデザインであると考えられるところ、原告主張のラベルの「Ripple Bed」という文字も、送風機の表示と同一の字体及びデザインで記載されている。

なお、原告は、原告がリップルベッドの名称で販売していた商品と原告製品は、エアセルの本数、大きさ、及び送風機の据え付け位置等が異なるから両製品の識別は容易であると主張するが、これらの要素が商品表示性を有しないことはいうまでもない。

(五) 原告製品は、その形態及び色彩が、英国ターレイ社製の(少なくともそのように表示されて販売されてきた)エアマットレスと類似するか否かという問題を別とすれば、以下にみるとおり何の特徴もなく、その形態及び色彩自体が強力に宣伝・広告されてきたものでもない。したがって、原告製品の形態及び色彩は商品表示性及び周知性を取得していない。

(1) 原告製品がエアセルタイプの交互膨縮型のエアマットレスであることについて

原告製品に先立ってエアセルタイプの交互膨縮型のエアマットレスが日本国内において広く販売されてきたことは既に詳述したとおりであり、原告製品がエアセルタイプ・交互膨縮型であることには何の独自性もない。

(2) 原告製品のエアセルが円錐台形状(鼓型)であることについて

エアセルの形が円錐台形状(鼓型、凹曲型)であることは、床ずれ防止のために、体圧を平均に分散して、身体の中心に余分な負担をかけないようにするため、また、エアマットレスが人体の頭部・背部、腰部等の体型に沿うようにするための技術的機能に由来する形状であり、英国ターレイ社のリップルベッド(原告が英国ターレイ社製であることを認める甲第四号証掲載のもの)、多比良株式会社(以下「多比良」という。)、エンゼル及び株式会社モルテン(以下「モルテン」という。)のエアマットレスのエアセルが、同様の形態を備えている。因みに帝国臓器はエアセルタイプの交互膨縮型エアマットレスにつき実用新案権を取得しているが、実用新案公報の考案の詳細な説明においても、エアセルは鼓型になっており、「…身体が安定して落着くようになっている。」と記載されている(3欄10行目~11行目)。

(3) 原告製品のエアセルが縦方向に一六本配列されていることについて

原告製品のエアセルが縦方向に一六本配列されていることについても、形態上の特徴ということはできない。エアセルタイプの交互膨縮型のエアマットレスにおいて、エアセルが縦方向に配列されていることは、原告製品に限ったことではなく、原告製品に先立って販売されていた同種のエアマットレスにもみられる。また、交互膨縮型のエアマットレスにおいて、エアセルの本数が偶数本となることは当然の前提であり、原告製品に先立って販売されていた同種のエアマットレスにもみられるところであるし、そもそも「エアセルの本数が一六本」であることは独自性を見いだすことができる性質のものではなく、また、原告製品について「エアセルが一六本」であるということで周知性を取得しているともいえない。なお、メディカ商会も、エアセルの本数が一六本のエアセルタイプのエアマットレスを販売している。

(4) 原告製品のエアセルがホックでベースシートに固定されていることについて

エアセルタイプの交互膨縮型のエアマットレスにおいて、エアセルをホックでベースシートに固定することも、原告製品に限ったことではなく、原告製品に先立って販売されていた同種のエアマットレスにおいてもみられるところである。本来、エアセル等の布製のものをベースシート等の布製のものに固定するためホックを使用することは慣用の手段であり、前記の帝国臓器の実用新案公報においても、エアセルをホックでベースシートに固定することが開示されている(2欄16行目~18行目)。

(5) 原告製品のエアセルの色彩が茶色であることについて

原告製品のエアセルの色が、複数の色彩等の組合せ・配列等により構成され、看る者をして他と際立った特別の印象を与えるならともかく、単なる茶色という極めて平凡かつ一般的な色であり、何らの特徴もない。原告が原告製品のエアセルを茶色に彩色しているからといって、茶色という色彩について原告に独占的使用権が生ずる理由は何もない。なお、茶色といっても濃淡、他の色との混合などにより、相当多数の「茶色」が存在する。

(六) なお、原告が本件の原告製品の製造販売を開始するに至ったのは、原告主張の昭和六二年ではなく、早くとも平成元年以降に過ぎないから、販売期間からみても、原告製品の形態及び色彩が被告製品の発売開始の時点で商品表示性及び周知性を取得していたとはいえない。

二  争点2(原告製品の形態及び色彩は被告製品の形態及び色彩に類似するか。両製品に混同が生じるか)

1  原告の主張

(一) 被告製品の形態上及び色彩上の特徴

被告製品の使用時における形状は、別紙物件目録(一)記載のとおりであるが、被告製品も、横長で円錐台形状(鼓型)のエアセルを、縦方向に一六本配列し、そのエアセルをホックでベースシートに固定し、右エアセルとベースシートはいずれも茶色に彩色されている。

前記一1(一)で述べた原告製品の形態及び色彩上の特徴は、被告製品の形態及び色彩上の特徴と完全に一致する。

なお、被告は、被告製品のエアセルには空気を噴出させる微細孔があると主張するが、そのような微細孔は文字どおり微細なものであって、容易に視認できるようなものではないから、原告製品と出所識別できるような特徴には到底ならないし、そもそも、原告は、被告主張のような空気の噴出といった機能の類比を論じているのではなく、商品等表示としての形態及び色彩の類比を問題にしているのである。また、被告は、被告製品の特徴は噴気式であるとしきりに強調し、その効果を過大に主張し、被告製品の販売に際しては、その点をセールスポイントにしているから、両製品に混同が生じないと主張する。しかし、現在では床ずれの褥創ケアには乾燥は禁忌とされ、皮膚保護剤を使った湿潤環境の保持と除圧などのケアが有効であることが力説されるようになっている。

(二) 被告製品が原告製品のデッドコピーであり、被告の不正競争の意図が明らかであること

被告製品は、商品等表示としての形態、色彩上の特徴が原告製品と完全に一致していることから、それだけで誤認混同のおそれを認定するに十分というべきであるが、以下に詳述するとおり被告製品は原告製品のデッドコピーであり、被告の不正競争の意図は明らかであるから、被告が不正競争の意図のもとに取引活動を行なうことで、両製品の混同のおそれはさらに大きいものというべきである。

まず、両製品の寸法と重量等を比較した場合、原告製品の大きさは幅約九二・五センチメートル、長さ約三三八センチメートル、重量(シーツを含む)が約四・五キログラムであるのに対し、被告製品の大きさは幅が約九五センチメートル、長さ約三三三センチメートル、重量(シーツを含む)が約四・五キログラムとほぼ同等であり、送風チューブの色彩まで同一(茶色)で同一であり、値段も同じである。

また、被告は、原告よりかなり遅れてエアセルタイプのエアマットレスの製造販売を開始したが(商品名は「サンケンマット」)、そのエアセル及びベースシートは、被告の従来製品(亀甲型のエアマットレス)と同様に青色の彩色が施され、エアセルの本数も一八本であった。それが、平成四年五月ころから、突如エアセルの本数を一六本としてこれを縦方向に配列し、エアセル及びベースシートに茶色の彩色を施した被告製品を製造販売するに至った。これは、原告製品が全国的に幅広く各需要者層から愛用され、信用を獲得していたことから、これに便乗しようとしたものであって、被告製品が原告製品のデッドコピーであること、被告に不正競争の意図があることは明らかである。因みに、被告は、被告製品に製造元として被告を表示していないし、総合商品カタログにも登載していない。また、専用シーツを固定するためのホックの数とその位置についても、これを本来プラスチック製にすべきところ、原告が従来製品との関係でやむなく金属製のものを採用したところ、被告もそのような事情がないのにホックを金属製にしている。

そして、被告は、原告の代理店や販売店等に対して、原告製品と同等の製品を原告より安価に納入するなどと称して、品質の劣る被告製品を販売するなどの営業活動を積極的に展開している。なお、原告製品に比して被告製品が劣っている点は、エアセルの強度(引っ張り強度、繰り返し疲労に対する強度)であり、交互膨縮を繰り返すことを特徴とするこの種の商品においては、溶着部の繰り返し疲労に対する強度が特に重要であるが、被告製品はその点でかなり劣っている。

(三) 取引の実状から見た誤認混同のおそれ

原被告とも、主として医療器具を取り扱う代理店や販売店(卸店)等を通じて全国の病院、老人ホーム等に商品を販売しているもので、両者の流通経路は完全に競合している。

なお、原告においては、エアマットレスの修理に関する問い合わせがあったときは、その製品がどこの製造にかかるか確認するため、必ずその色彩を尋ね、色彩が茶色であるときは、次にエアセルの本数を尋ねて原告の製品かどうか確認しているが(前記一1(一)のとおり、エアマットレスは各社それぞれに色彩上の特色があり、エアセルの本数も各社によって異なる。)、被告が形態のみならずエアセルの本数及び色彩までも原告製品に酷似する被告製品を製造、販売するに至ったため、修理の面でもまぎらわしく、混同が生じるおそれがある。

被告は、この種商品は送風機とセットで販売されるところ、原告製品と被告製品は送風機の形状等が異なるから、混同は生じないと主張するが、この種商品が必ずしも送風機とセットで販売されるとは限らない。原告においても、被告においても、エアマットレスと送風機に別々の定価が付されており、当然それらが分売されることもある。被告製品は、再三指摘しているとおり、形状及び色彩等を含め原告製品と寸分たがわず製造(模倣)されているため、原告の送風機に被告製品を接続することは可能であり、現に接続すると、原告社員ですら、原告製品が接続されているかのように混同してしまうのである。また、被告が、販売戦略の一環として、前記のとおり原告製品の取扱販売店等に対し、原告製品と同等の製品を原告より安価に納入するなどと称して、廉価販売しているため、販売店等が、エアマットレスのみを安く被告から仕入れ、これに原告の送風機を組み合わせて原告の商品として販売するおそれが多分にあり、さらに、原告製品が多数納入されている病院等でエアマットレスのみの追加注文があった時に、販売店等が安く仕入れた被告製品を納入、販売すれば、病院等のエンドユーザーは、外見上これを見分けることはまず不可能である。

被告は、この種商品の需要者・使用者が特殊かつ限定的で、床ずれに対する知識、経験を前提としてこれに関する商品説明等を確認した上で商品を購入するから、混同のおそれはまずないと主張するが、右主張は不正競争者がいつも口にする常套句に他ならない。被告は、右商品説明に関し、原告製品の販売業者、営業担当者は、需要者・使用者に対し、原告製品のエアセルが交互に膨張と収縮を繰り返すこと、右膨張と収縮は送風機から送り込まれる空気によって行なわれること、他社製品との比較において、右波動が床ずれ防止になること等々を説明し、需要者・使用者もまた右説明を見聞し、あるいは床ずれ防止になぜ効果があるのか説明を求め、その使用方法を質し、あるいはまた、モーター音の音量、モーターの電気代を尋ねる等々の経過を経て購入の可否を判断すると主張するが、全ての需要者・使用者が右のような経過を経て購買するとは限らない。たとえば、原告製品を使用している病院を退院して、自宅療養に移行した患者(需要者、エンドユーザー)などは、使用方法等は既に承知しているから、病院で原告製品を使用した経験をもとに、被告主張のような説明を求めるまでもなく、原告製品の形態及び色彩等の特徴を選択基準として原告製品を購買する例が少なからずあり、このような時に原告製品を酷似的に模倣した被告製品との間に混同を生ずるおそれがある。被告の行為は、今次の改正不正競争防止法で規制の対象とされているデッドコピーそのものであって、健全な競争秩序維持の観点からも規制されるべきである。

2  被告の主張

(一) 被告製品開発の経緯

(1) 被告代表者は、昭和四七年、労災事故で右腕をなくし、三か月入院した経験から、床ずれ治療のための噴気式エアマットレスを考案した。これは、現在の被告製品とは異なりエアセル型・交互膨縮型ではなく、亀甲型の噴気式エアマットレスである(以下、被告が製造したエアマットレスのうちこの型のものを「被告従来製品」という。)。被告代表者は、昭和五二年に右考案につき実用新案権を取得した。

被告会社は、昭和五〇年ころから被告従来製品の製造・販売を開始したが、当時、日本国内においては、国産品のエアマットレスとしては被告会社の右エアマットレスだけが販売され、他にエアセルタイプの交互膨縮型のエアマットレス(英国ターレイ社製)、亀甲型の交互膨縮型のエアマットレス(ドイツ製)が販売されているという状況であった。

被告従来製品は、唯一の国産品として他の外国製商品と比較して廉価である上、「医科器械学会」(乙第九号証)において、熊本大学のスタッフにより、床ずれ等の予防・治療と悪臭の除去に大きな効果があることが発表され、「看護展望」(乙第一一号証の3)において、英国ターレイ社製のリップルベッド、ドイツ製アルチデキュビータス等の単なる交互膨縮型エアマットレスよりも褥創の予防・看護に好ましい特性を有していること等の事実が発表され、新聞・雑誌等においても大々的に報道され、爆発的人気を呼んで今日に至っている。このことは、被告従来製品の市場占有率が昭和五五年当時四〇・八パーセント、昭和五六年当時四二・七パーセントに及んでいることからも裏付けられている(乙第一九号証)。

この間、被告代表者は、噴気式エアマットレスの発明により昭和六二年には社団法人発明協会の発明賞を、昭和六三年には科学技術庁長官賞を受賞し、諸々の床ずれ予防、治療用エアマットレスの中でもその声望は不動のものになったのである。

被告は、「噴気式エアマットレス」のみが床ずれ予防・治療に絶大な効果を発揮するという信念と自信に基づき、これまで一貫して「噴気式エアマットレス」のみを製造・販売してきており、被告製品は取引者・需要者の間で広く周知性を獲得しているのである。

(2) 右のとおり、被告は、昭和五〇年ころから、亀甲型の噴気式エアマットレスのみを製造・販売してきたが、被告代表者は、それ以外に、昭和五一年、エアセルタイプの交互膨縮型の噴気式エアマットレスの考案を出願し、昭和五五年に実用新案権を取得していたので(乙第七号証)、右実用新案権に基づき、これを製品化すべく、平成二年四月ころ、エアセルタイプの交互膨縮型でエアセルの彩色がブルーの噴気式エアマットレスを製造・販売した(乙第八号証の11)。次いで平成四年五月ころ、同じ型でエアセルの色が茶色のもの(乙第八号証の12。すなわち被告製品)とグリーンのもの(乙第八号証の13)をそれぞれ製造・販売した。これは需要者の色彩の好みの多様化に対応するためである。

(二) 原告製品と被告製品の基本的な差異

原告製品は、一本おきに二系統に分けられたエアセルが、送風機から送り込まれる空気によって交互に膨張と収縮を繰り返し、使用者の足から頭の方向に向かって徐々に圧力ポイントが移動し、右の動きが体圧交換と同様の除圧を実現し、床ずれ防止に効果がある。換言すれば、原告製品は、エアセルの膨張と収縮によって床ずれを防止する。

他方、被告製品は、エアセルの表面に相当数の微細孔を設け、一本おきに二系統に分けられた右エアセルが給気装置(送風機)から送り込まれる空気によって交互に膨張と収縮を繰り返すと同時に、右膨張と収縮を繰り返す、エアセルの表面の相当数の微細孔から空気を噴気させることによって、除圧と同時に皮膚を常に乾燥状態に保ち、床ずれの防止はもとより、床ずれ治療もするというものである。エアセル上に仰臥することになる使用者も、被告製品を使用した場合には右の微細孔から噴出する空気を当然感知することになる。

右のとおり、原告製品は単なる波動式エアマットレスであるのに対し、被告製品は「波動式+噴気式エアマットレス」であり、取引者・需要者をして両者の混同を生ぜしめるおそれは全くない。

原告は、被告製品は、商品表示としての形態及び色彩上の特徴が原告製品と外観において完全に一致していることから、それだけで混同のおそれを認定するに十分であるなどと主張するが、原告主張の形態及び色彩上の特徴が商品表示とはいえないことは一2(五)で述べたとおりである。

また、原告は、被告製品の微細孔は文字どおり微細なものであって容易に外部視認できるものではないから、原告製品と出所識別できるような特徴には到底ならないと主張する。しかし、被告製品を含む被告の製造・販売にかかる全てのエアマットレスは、エアセルの表面の孔からエアー(微風)を噴気(噴出)させ、右エアー(微風)によって床ずれを治療するものであり、右噴気式であることが、被告のエアマットレスの特徴の一つとして、取引者・需要者に認識されており、被告製品も同様であることは、(一)(1)に述べたところから明らかである。判例も、外見上覚知できない商品の構成部分について、「商品の取引において、商品のある構成部分が、その商品の特徴の一つとして、取引者又は需要者に認識されるものであれば、その構成部分をもつて、その商品の形態を構成するものと解すべきところ…」と判示している(東京地判昭和四八年三月九日、判夕二九五号三六一頁以下)。

(三) 被告製品が原告製品の模倣ではないこと

原告は、被告製品が原告製品のデッドコピーであると主張する。

しかし、被告は、(一)で述べたとおり、噴気式のエアマットレスを独自に開発しており、単なる波動式のエアマットレスである原告製品を模倣する必要は全くない(被告は単なる波動式のエアマットレスを製造販売したことはない。)。

原告は、被告製品のエアセルが一六本である点について、原告製品を模倣したものであると主張するが、被告は、人間の身長、エアベースの大きさ、製造原価、交互膨縮エアマットレスとしてエアセルの本数は偶数本でなければならないこと等の条件を考慮した結果、エアセルの本数を一六本にしたものである。

原告は、被告製品のエアセルの彩色が茶色なのは原告製品を模倣したものであると主張するが、被告は、需要者の色彩の好みについての多様化に対応するべく、エアセルタイプの噴気式エアマットについて、ブルー、茶色、グリーン等の色彩を採用したものであることは前記(一)(2)のとおりであり、被告製品に採用した茶色にしても、検甲第二号証の1、2の写真によって明らかなとおり、原告製品の茶色より濃度の薄い茶色であり、原告製品の彩色を模倣したものではない。また、エアセルをベースシートに固定する帯の色をみると、原告製品では、エアセルと同じ濃度の茶色を使用しているのに対し、被告製品では、エアセルの茶色より濃度の濃い茶色を使用しているため、エアセルと帯との色調のコントラストが強いものとして構成されている。

原告は、被告製品における専用シーツを固定するためのホックの数とその位置について、原告製品を模倣したものであると主張するが、布製等のものを、相互にホックで固定することは原告製品に限ったことではなく、被告が原告製品を模倣する必要はない。

原告は、被告製品においてホックを金属製にしていることについて原告製品を模倣したものであると主張するが、被告は、当初、エアセルタイプの交互膨縮型エアマットレスでエアセルの彩色がブルーのものにシーツ固定用ホックを取り付けるについて、シーツ下請会社に相談したところ、シーツは取り替えの頻度が高いので、ホックはプラスチック製よりも金属製の方がよいとの助言があり、これに従ったものであり、その後、同型のエアマットレスでエアセルの彩色がグリーンのものや茶色のもの、すなわち被告製品の製造にあたってもこれを踏襲したもので、原告製品を模倣したものではない。

また、原告は、被告製品が原告製品に比べエアセルの強度(引っ張り強度、繰り返し疲労に対する強度)、特に溶着部の繰り返し疲労に対する強度がかなり劣っていると主張するが、むしろ、いずれについても被告製品の方が原告製品より優れているから(乙第一六号証)、原告主張はこの点からも理由がない。

(四) 取引の実状からみた誤認混同のおそれについて

(1) 原告は、エアマットレスの修理に関する問い合わせがあったときは、その製品がどこの製造にかかるか確認するため、必ずその色彩を尋ね、色彩が茶色であるときは、次にエアセルの本数を尋ねて原告の製品かどうか確認しているが、被告が形態のみならずエアセルの本数、色彩まで原告製品に酷似する被告製品を製造、販売するに至ったため、修理の面でもまぎらわしく、混同を生じるおそれがあると主張する。しかし、原告において、仮にエアマットレスの修理に関する問い合わせがあった場合、原告製品は波動式であり、被告製品は噴気式であるから、当該エアマットレスが波動式か噴気式か否かを尋ねれば、原告製品かどうかはただちに判明する。わざわざまわりくどく、エアマットレスの色彩を尋ね、それが茶色であったときはさらにエアセルの本数を尋ねて、原告製品か否かを確認する必要はないし、そのようなことが実際に原告において行なわれているなどとは到底信じられない。

(2) 原告製品も、被告製品も、いずれもエアマットレス単体で使用できる商品ではなく、エアセルに空気を送り込む送風機と一体不可分に販売され使用される商品である。原告製品も被告製品も各々の送風機の形状や性能が全く異なるから、実際に使用される場面において両者が混同されるおそれはない。

また、原告製品と被告製品のそれぞれに接続される送風機は、色(原告製品に接続されるものはアイボリー、被告製品に接続されるものは黄土色)、材質(原告製品に接続されるものは合成樹脂、被告製品に接続されるものは鈑金)、形、大きさ等において異なり、原告製品に接続される送風機には、「ケープのエアーマット」、被告製品に接続される送風機については「ヘルシーマット」と、それぞれの商品名が表示されている。

そして、被告製品においては、送風機によってエアセル内に送り込まれる空気がエアセルの表面の相当数の小孔から噴気するものであるのに対し、原告製品においては、送風機によってエアセル内に送り込まれる空気は、一定量に達した場合、送風機中に設けられた排気孔から放出される仕組みになっている。比喩的にいえば、被告製品と接続される送風機は、エアセルを膨張させるのに必要な空気ばかりでなく、エアセルが膨張しながらその表面から噴出する空気をも送気するに足りるだけの風量と風圧を必要とするのに対し、原告製品に接続される送風機は、エアセルを膨張させるのに必要な空気を送気すれば足りるものである。したがって、風量についてみると、被告製品に接続される送風機では一一・五リットル/分であるのに対し、原告製品に接続される送風機は四・五リットル/分であり、風圧についてみると、被告製品に接続される送風機では一四五mm/Hgであるのに対し、原告製品に接続される送風機では九〇mm/Hgに過ぎない。そして、被告製品に本来原告製品に接続される送風機を接続すると、人の体重がかかるエアセル部分は全く膨張せず、床ずれ予防を目的とする噴気式エアマットレスとしての用をなさないのである。すなわち、原告製品に接続される送風機と被告製品に接続される送風機は、機能的に全く互換性がない。

因みに、被告製品は、本来被告製品に接続される送風機と不可分一体のものとして販売され、かつ使用されるものであるため、被告においては、被告製品専用、右送風機専用のパッキングケースは製造しておらず、両者を収納して販売するためのケースを製造している。したがって、被告が送風機と切り離して被告製品のみを廉価販売することなどありえない。

(3) 原告製品及び被告製品は、一般的な寝具としてのマットではなく、床ずれの防止又は治療を目的とするエアマットレスであるから、床ずれの防止又は治療を必要とする者を収容している病院や老人ホーム、床ずれの防止又は治療を必要とする者など、需要者・使用者が特殊かつ限定的で、床ずれに対する知識、経験を有していることに特徴がある。したがって、これら需要者・使用者及びその仲介をする代理店等は、右知識・経験を前提として、エアマットレスの使用方法、使用時の状態、使用による効果を確認したうえ、購買の選択・判断をすることはいうまでもない。この種商品の価格が比較的高価であることからも、右のような選択・判断を行なうことになる。単にエアセルの本数が一六本で、その色彩が茶色だからという理由で購入する者などあるはずがない。不特定の需要者が購入する衣服・装身具・レジャー用品・家具・調度品等の場合、往々にして商品の色彩や形態を重視して取引されたりするのと異なるのである。

これを具体的にいえば、原告製品の販売業者、営業担当者は、需要者・使用者に対し、原告製品のエアセルが交互に膨張と収縮を繰り返すこと、右膨張と収縮は送風機から送り込まれる空気によって行なわれること、他社製品との比較において、右波動が床ずれ防止になること等々を説明し、需要者、使用者もまた右説明を聞き、あるいは床ずれ防止になぜ効果があるのか説明を求め、その使用方法を質し、あるいはまた、モーター音の音量、モーターの電気代を尋ねる等々の経過を経て購買の判断をする。被告製品の販売業者、営業担当者もまた被告製品の販売に際し、需要者・使用者に対して、被告製品のエアセルが送風機による給気によって波動すると同時に、他社製品とは異なり、エアセルの表面の噴気孔から空気が噴気することによって床ずれ防止はもとよりその治療にも効果があること等を説明し、需要者、使用者もまた右説明を聞き、あるいは質問する等々した上、被告製品購買を決定するのである。

したがって、右のような取引の実情からみても原告製品と被告製品の混同は生じない。

原告は、病院を退院して、自宅療養に移行した患者が、使用方法は既に承知しているから、病院で原告製品を使用した経験をもとに、原告製品の形状及び色彩等の特徴を選択基準として原告製品を購買する例が少なからずあり、このような時に原告製品を酷似的に模倣した被告製品との間に混同を生ずるおそれがあると主張する。しかし、右のような場合、平均的な注意力と記憶力を有する者が、エアセルの形状が円筒状ないし鼓状であること、彩色が茶色であることは記憶し得るとしても、エアセルの本数までも正確に記憶し得るとは考えられない(せいぜい十数本とか、一五本前後とか、一四、五本とか、二〇本前後という程度の認識を有するに過ぎないであろう。)。そして、エアセルの本数が一六本であると記憶し得る極めて希有な注意力・観察力・記憶力を有する者からの申込が仮にあったとしても、当該エアマットレスが波動式であるか噴気式であるかを尋ねれば、原告製品と被告製品のいずれを求めているのかは容易に判明し(エアマットレスが交互に膨らんだり、縮んだりするだけか、エアマットレス表面から空気が噴出していたかは、平均的注意力・記憶力以下の患者でも十分に述べ得るものである。)、両者の混同を生じる余地はない。平均人は、エアセルの本数まで注意・観察・記憶していないはずであり、仮に右平均人としての患者が、エアセルの色は茶色、形は鼓型、本数は十数本、波動式のエアマットレスと指定して購入を申し込む場合、混同が生じるとすれば、原告製品と、英国ターレイ社製の「リップルベッド」等別表記載の各会社の販売にかかるエアマットレスの間においてこそそうなるであろう。

三  争点3(原告に生じた損害金額)

(原告の主張)

被告は、遅くとも平成四年五月から被告製品を製造販売している。被告製品の販売価格は一台あたり四万五〇〇〇円であり、被告は月間少なくとも一〇〇台の被告製品を販売しているが、その利益率は少なくとも一割は存する。被告は平成四年五月から同年一〇月までの六か月に少なくとも二七〇万円の利益を得たことになる。そして、商標法三八条一項の類推適用により、これが原告の受けた損害額と推定される。

第四  争点に対する判断

一  争点1(原告製品の形態及び色彩がいわゆる商品表示性及び周知性を取得したか)

【事実関係】

1 原告が「リップルベッド」の名称で販売していたエアマットレスの開発及び販売の経緯

証拠(甲二の1、2、三、四、一三、一九、二一、二四、三六、三七、五三、乙一の1、2、二、三、四の1、2、五の1ないし3、一一の3、一四、一九、二一、二二の1、2、二三の1、2、二四、検甲一の1ないし4、証人竹田、被告代表者、弁論の全趣旨)を総合すれば、以下の事実を認めることができる。

(一) 原告会社は、昭和五六年四月に設立された有限会社ケープトレーディングリミテッドが昭和六〇年五月二日に株式会社に組織変更してケープトレーディング株式会社となり、平成元年七月八日に現商号に変更した会社(以下で「原告会社」という場合、特にことわらない限り、現商号の「株式会社ケープ」のみならず、「有限会社ケープトレーディングリミテッド」及び「ケープトレーディング株式会社」を含む意味で用いる。)である。原告代表者は、右有限会社設立以来一貫して原告会社の代表取締役の地位にある。

(二) 原告代表者は、ドッドウェルに勤務していた昭和四八年ころ、同社において自己が担当者となって、英国ターレイ社製の床ずれ防止用エアマットレス「リップルベッド」の輸入を企画し、初めて日本市場を開拓した。英国ターレイ社製の「リップルベッド」は、エアセルの表面が薄い青色に彩色された塩化ビニール製であった。ドッドウェルは、英国ターレイ社製の「リップルベッド」を、当初は全部ドリーム特販の前身のドリーム寝台工業株式会社(以下「ドリーム寝台」という。)を販売代理店として販売したが、同社の本社が広島にあることもあって、販売地域が西日本にかたよる弊があったので、昭和五〇年ころからは東日本については帝国臓器を販売代理店とした。

英国ターレイ社製の「リップルベッド」は、英国人の体型や英国の気候を前提に設計されていたため、日本人の体型に合わず、塩化ビニール製のため、汗でべとつきやすい等の問題があり、また、エアセルのパンクも多く発生した。そこで、原告代表者は、英国ターレイ社の承認のもとに、「リップルベッド」を基本にして日本で独自にエアマットレスを製造することにし、昭和五二年ころからサイズを英国ターレイ社製の「リップルベッド」より一回り小さめの日本人の体型やベッドの大きさに合わせたものに改良し、エアセルの素材もゴム引き布張りにし、エアセルの色彩は茶色としたエアマットレス(以下「旧製品」という。)を開発し、これを「リップルベッド」の名称で英国ターレイ社製の送風機と組み合わせて発売した。旧製品は、エアセルの形は円錐台形状(鼓型)で、その数は英国ターレイ社製のリップルベッドと同数の一四本であった。

なお、株式会社富士経済マーケティング局作成の昭和五六年九月三〇日付「床ずれ防止用マット調査報告書」(乙第一九号証)には、旧製品の販売会社名として帝国臓器があげられており(ブランド名は「リップルベッド一般ベッド用マット」)、医療用・一般用合計の旧製品の市場占有率は、昭和五五年に販売数量で七・七パーセント、販売高で一〇・二パーセント、昭和五六年(見込)に販売数量で八・二パーセント、販売高で一〇・八パーセントとされているが、ドッドウェルが製造元であることを窺わせる記載はなく、他方、旧製品には、左記のラベルが貼付されていた。

RIPPLE BED

FOR BED-SORE THERAPY

“Frusto-Conical Cell Mattress”PRODUCED BY DODWELL & CO., LTD. UNDER LICENCE FROM Talley Medical Equipment Ltd. ENGLAND

(三) その後、昭和五五年に原告代表者がドッドウェルを退社することになった際、同社としては、旧製品の採算がとれないこと、同社において旧製品の販売を担当していたのが事実上原告代表者一人だったことなどから、旧製品の販売から撤退することを検討していた。そこで、原告代表者は、英国ターレイ社、ドッドウェル、旧製品の製造会社、ドリーム寝台及び帝国臓器等関係者の了承を得て、自己及び設立を予定していた会社において旧製品を販売することにした。その結果、昭和五六年に有限会社ケープトレーディングリミテッドが設立され、その後同社が株式会社に組織変更されてからも、旧製品は昭和六二年まで英国ターレイ社製の送風機と組み合わせて「リップルベッド」の名称で販売された。そしてこの間、原告会社は、英国ターレイ社にロイヤリティーの名目で旧製品一台につき一二〇〇円を継続して支払ってきたが、これは、旧製品の発売時には未だ交互膨縮型のエアマットレスの国内メーカーは十分に成長していなかったため、信用と販売実績のある英国ターレイ社の社名とその主力製品である「リップルベッド」の商品名を利用することが旧製品の販売戦略上も不可欠であり、それに対する対価としての性質を有するものであった。

ケープトレーディング株式会社時代の旧製品のパンフレット(乙第一号証の1、2)の表紙には、上部に「リップルベッド」と商品名が大きく記載され、中央部に旧製品の写真が大きく掲載され、下部には輸入総発売元としてケープトレーディング株式会社の社名が、製造元として英国ターレイ社の社名が英国国旗を冠して、それぞれ明瞭に表示されており、また、表紙の裏には「《床ずれ》に対する予防、治療の研究成果を踏まえ、専門的な立場で技術開発に取り組んできた英国ターレイ社が、新しく設計した床ずれ予防・治療システムです。」との記載がある(ただし、乙第一号証の2には《》はなく、「床ずれ」の文字が赤字になっている。)。

なお、旧製品には、枕が置かれる位置に甲第二号証の2のラベルが貼付されていた。同ラベルは、縦約八・五センチメートル、横約一五・五センチメートルの大きさで、全体の地色は明るいベージュ色である。同ラベルの上部には、幅約一三センチメートルの青地帯(空気を抜いて引き伸ばした状態のエアセルの形態をイメージした上底約一・八センチメートル、下底約三・二センチメートルの二つの台形を上底を重ね合わせて左右対称に配置した鼓形である。)に大きくRIPPLEBEDと地の色の文字で記載され(なお、一文字ごとに少しずつ上下して記載されているので、全体視するとちょうどさざ波のようにも見える。)、その下に小さく FORBED-SORE THERAPYと書かれている。その下には“Frusto-Conical Cell Mattress”と記載され、さらにその下にエアマットレスに人間が横臥している図柄のイラストが描かれている。そしてその下に、二行にわたり、

PRODUCED BY CAPE TRADING LTD. UNDER LICENCE FROM Talley Medical Equipment Ltd. ENGLAND

と記載されているが、「CAPE TRADING LTD.」の部分は他に比べ太字になっている。

(四) 原告会社の前身である有限会社ケープトレーディングリミテッド及びケープトレーディング株式会社は、岡島産業に対し、同社が倒産した昭和六〇年まで、旧製品を卸売した。岡島産業は旧製品と英国ターレイ社製の送風機を組み合わせて「リップルエアーマットレス」の商品名で販売した。岡島産業が販売していた旧製品のパンフレット(乙第二号証)の表紙には、上部に「リップルエアーマットレス」と商品名が大きく記載され、その右上(最上部)に英国国旗とその下に「MADE IN ENGLAND」の表示があり、中央部に旧製品の写真が大きく掲載され、また表紙の裏には「床ずれに対する予防・治療の研究成果を踏まえ、専門的な立場で技術開発に取組んで来た英国のターレイ社が、特に日本の療養者向けに新しく設計したエアーマットレスです。」との記載がある。なお、岡島産業が販売する旧製品にも、枕が置かれる位置に甲第二号証の2のラベルが貼付されていた。

(五) 有限会社ケープトレーディングリミテッド及びケープトレーディング株式会社は、ドリーム特販に旧製品を卸売した。ドリーム特販は、旧製品を英国ターレイ社製の送風機と組み合わせて「リップルベッド」の商品名で販売した。なお、原告において主力製品が原告製品となってからは、原告からドリーム特販への卸売も、原告製品が中心となり、ただ、ドリーム特販の顧客から特に注文があった場合や、ドリーム特販の売却先からのメンテナンスの依頼があった場合に、旧製品が取引されている。ドリーム特販のパンフレット(乙第三号証)の表紙には、上部に「リップルベッド」と商品名が記載され、中央部には、旧製品の構造を示す写真と送風機の構造を示す写真が掲載され、下部には製造元として英国ターレイ社の社名が、発売元としてドリーム特販の社名が表示されており、また、表紙の裏には「《床ずれ》予防・治療のために20年以上にわたり、専門的な技術開発を続けてきた英国ターレイ社が、日本における病院・施設等の現場のご意見や、ご要望を反映し、特に日本向けに新しく設計した、理想のエアーマットレスです。」との記載がある。なお、ドリーム特販が販売した旧製品にも、枕が置かれる位置に甲第二号証の2のラベルが貼付されていた。

(六) 原告会社は、現在に至るまで帝国臓器に旧製品を卸売している。帝国臓器は、当初は、旧製品を英国ターレイ社製の送風機と組み合わせて「リップルベッド」の商品名で販売していたが、昭和五七年一二月から、旧製品を同社が独自に製造した送風機と組み合わせて「RBエアーマットテイゾー」の商品名で販売するようになり、同月一六日、有限会社ケープトレーディングリミテッドとの間に合意書(甲第一三号証)を取り交わした。右合意書には、有限会社ケープトレーディングリミテッドが旧製品を岡本理研ゴム株式会社に外注して製造し帝国臓器に供給すること(第三条)、旧製品の単価には英国ターレイ社に対するロイヤリティー一二〇〇円が含まれること(第八条)等が定められている。

帝国臓器のパンフレット(乙第四号証の1、2、第二一号証、第二二号証の1、2、第二三号証の1、2)には、旧製品が英国ターレイ社製であることを示唆する記載はない。乙第四号証の1(一九八五年三月付のパンフレット)及び乙第二二号証の1(一九八二年一一月付のパンフレット)の「RBエアーマット関連商品仕様」欄の商品番号RB三三〇(E八二型送風装置)について、「新発売品-国産新型」の注記があるが、その他の商品(たとえば旧製品とみられるRB一一〇一般ベッド用マット)が外国製であることを窺わせる記載はない。また、乙第二一号証のパンフレットの表紙には、旧製品のほかに英国ターレイ社製のものと思われる送風機(甲第三、第四号証の英国ターレイ社のパンフレットに掲載された送風機と同じものである。)の写真が掲載されているが、右送風機が英国ターレイ社製である旨の表示はない。他方、これらのパンフレットには、旧製品が原告の製造にかかることを示唆する記載もない。これは、帝国臓器が昭和五六年の時点で資本金一〇億八九〇〇万円に及ぶ武田薬品系列の日本でも名の通った大会社であったため、旧製品の販売にあたって英国ターレイ社の社名を特に利用する必要がなかったこと、反面、帝国臓器に比べれば全く無名といってもよい原告会社の社名を製造元として表示することは販売戦略上かえってマイナスとなるとの判断によるものと推認される。

なお、帝国臓器が販売する旧製品には、枕が置かれる位置に、商品名が「リップルベッド」の時代には甲第二号証の2のラベルが、商品名が「RBエアーマットテイゾー」の時代には甲二号証の1のラベルが貼付されていた。甲第二号証の1のラベルは、甲第二号証の2のラベルとほぼ同じ大きさで、全体の地色は明るい灰白色である。同ラベルの上部には、横約一三センチメートルの黄緑色地帯(空気を抜いて引き伸ばした状態のエアセルの形態をイメージした上底約二・一センチメートル、下底約二・五センチメートルの二つの台形を上底を重ね合わせて左右対称に配置した形である。)に大きく「RBエアマット」「テイゾー」と二段に分けて明るい灰白色(ラベルの地色)で記載され、その下に発売元として帝国臓器の社章、商号、住所、電話番号が記載され、その下に、二行にわたり、

PRODUCED BY CAPE TRADING LTD. UNDER LICENCE FROM Talley Medical Equipment Ltd.

と書かれているが、CAPE TRADING LTD.の部分は他に比べ文字が太くなっている。

(七) 甲第一九号証(看護総合雑誌エキスパートナース一九九〇年一〇月号)には、原告製品のほか、旧製品が帝国臓器販売の「RBエアーマット」の商品名で、甲第二四号証(一九九二年一二月二四日発行の社団法人日本薬剤師会編集「在宅看護と関連用品」)には、原告製品のほか、旧製品が「RBエアーマットテイソ」の商品名で(入手先は帝国臓器と記載されている。)、甲第五三号証(一九九二年一二月発行の日本ストーマリハビリテーション学会誌第一〇回学会総会号)には、原告製品のほか、旧製品が帝国臓器の販売する「RBエアーマット」の商品名で、乙第一一号証の3(看護展望一九八二年一月号)には、旧製品が英国製リップルベッドとしてそれぞれ紹介されているが、原告との関連は全く記載されていない。

2 原告製品の開発の経緯と販売状況

(一) 原告は、昭和六二年から旧製品を改良した原告製品の販売を開始した。改良の眼目は、白色の送風チューブの位置に変更を加え、目立たない位置に収めるようにしたこと、エアセルの本数を一六本に増やし、その寸法を小さく設定したことである。エアセルの本数を増やしたのは、それによってエアマット使用者の体を低く支えることができるようになり、看護者の処置のしやすさが増大すること、一本のマット(エアセル)が体に接触する部分の面積がそれだけ少なくなって寝心地が改善され、除圧の効果も高まること、全体の重量も軽くなることを狙ったものである。なお、この際、旧製品については帝国臓器に卸売する商品を除いては製造販売を停止している(甲二五、証人竹田)。

(二) 原告は、原告製品のカラー写真を掲載したパンフレットを配って営業活動を展開した。そこで、これらのパンフレットに、原告主張の原告製品の形態及び色彩上の特徴がどの程度表現されているかについて検討する。まず甲第一〇号証のパンフレットには、エアセルの形状について「超低圧保持を実現する鼓型エアセル」の見出しのもとに、「エアセルを鼓型にしたため体圧が平均的に分散され、身体の中心部に余分な負担がかかりません。さらにエアセルの口径を太くして、より低圧で支える設計にしました。」と説明されているが、エアセルの色彩については特段の説明がなく、エアセルの本数についても、仕様を示す部分に「エアセル本数/16本」の記載はあるものの、一六本としたことの技術的な意味については積極的な説明は何らない。また、甲第一二号証のパンフレットには、エアセルの形状について、システムの特長欄の〈3〉項に「エアーセルの形状は両端が太く、中心部が細い円錐台形設計のため、平均的に体圧が分散され、身体の中心部に余分な負担がかかりません。また、身体がエアーマットによくフィットし、心地よい安定が保たれます。」との記載があり、「結局FC型になります。FC(円錐台形)型は身体を支える基本です。」という見出しのもとに、「・右図のように、16本のエアーセルは一本おきに送風チューブで連結されていて、各8本ずつのA系統、B系統の2群になっています。… ・A系統とB系統は、5分の時間差で膨張・収縮を繰り返していますので、患者の身体は5分間隔で圧迫部位が移動し、確実なマッサージ効果が得られます。… ・エアーセルの中央部が細くなっているため、マットレスと身体の接触面積が広くなり、体圧が分散されます。このため、脊椎部分に余分な圧力がかからず、患者の苦痛をやわらげます。…」との説明があるが、エアセルの色彩については特段の説明はなく、エアセルの本数についても、仕様を示す部分に「エアーセル本数16本」との記載があり、システムの特長欄の〈2〉項に「16本のエアーセルは二系統の空気回路に分かれ、約五分間隔で空気が交互に入れ替わります。無理のない時間差で圧力ポイントが移動し、安眠を妨げません。」との記載があり、「結局FC型になります。FC(円錐台形)型は身体を支える基本です。」という見出しのもとに、前同様の記載があるものの、エアセルが一六本であることの技術的な意味について積極的な説明は何らない。

(三) 原告製品はその販売が増大するにつれて、医療関係の雑誌等にもしばしば紹介されるようになった。そこで、これらの雑誌等について原告主張の原告製品の形態及び色彩上の特徴がどの程度紹介されているかについて検討する。

甲第一七号証の「政府管掌健康保険在宅介護支援事業 介護機器レンタル料助成の手引き 平成5年度版」(全国福祉機器・介護用品レンタル事業協議会発行)には、「床ずれ防止エアー発生調節器」の欄に原告製品がカラー写真入りで紹介されており、エアセルの形状について「エアーセルは端部が太く、中央部が細くなっています。このためからだの中心部に余分な負担をかけません。」との説明があるが、エアセルの色彩及び本数については特段の指摘や説明がない。

甲第一八号証の「改訂新版困った時の介護読本」(日本在宅医療福祉協会発行)には、「ケープのエアーマット」として原告製品がカラー写真入りで紹介されているが、エアセルの形状、色彩及び本数について特段の指摘や説明はない。

甲第一九号証の「看護総合雑誌エキスパートナース」一九九〇年一〇月号には、「スタンダードセット」として原告製品がカラー写真入りで紹介されており、エアセルの形状について「セルは中心部が小さく、両端が大きい鼓型になっているので、体圧が平均的に分散し、余分な圧力がかからない。」と説明され、エアセルの本数については「…16本の棒状の袋(セル)が、5分間隔で、交互に膨縮を繰り返し、患者の足から頭のほうへ、徐々に圧力ポイントを移動させる。」との記載があるものの、エアセルが一六本であることの技術的な意味について積極的な説明は何らない。

甲第二〇号証の「月刊ナーシング一九九一年六月号」には、原告製品が写真入り(二色写真)で紹介されているが、エアセルの形状、色彩及び本数について特段の指摘や説明はない。

甲第二二号証の「脚光浴びる介護機器業界」(日本債券信用銀行産業調査部平成五年一月発行)には、原告がエアマットレスメーカーの大手として紹介されてはいるものの、原告製品についての具体的な記述はない。

甲第二三号証の「ヘルスケア産業総括報告94医療・健康・シルバー市場の動向分析」(日経ヘルスビジネス編)には、原告製品が紹介され、エアセルの形状について「円筒形」(原告製品のエアセルの形状は円錐台形型・鼓状であるから、必ずしも正確な説明とはいえない。)と説明されているが、エアセルの色彩及び本数については特段の指摘や説明はない。

甲第五三号証の日本ストーマリハビリテーション学会誌第一〇回学会総会号(一九九二年一二月発行)には、原告製品が「筒状分離型」製品の一つとして紹介されているが、エアセルの形状、色彩及び本数について特段の指摘や説明はない。

甲第五九号証の「NURSE+1」一九九四年一月号には、原告製品が、圧切り替えのあるセル式(二系筒)エアーマットレス(スタンダード/ケープ)」として紹介されているが、エアセルの形状、色彩及び本数について特段の指摘や説明はない。

原告製品は、その販売の増大に伴い、複数の地方公共団体や社会福祉法人等から、エアマットレスの入札に当たり、見積の規格品、参考品等として指定されるようになったが(甲第三五号証の1ないし9)、これらの指定にあたって、特にエアセルの形状、色彩及び本数に着目して指定されたものとは認められない。

【判断】

原告製品は、寝たきりの老人や長期療養患者等を対象(使用者)とする介護機器の床ずれ防止用の交互膨縮型エアマットレスであり、その商品の性質上、主たる取引者又は需要者は、そのような老人や患者を収容して介護や看護にあたる老人ホーム等の施設や病院であって、一般人が高齢者の在宅介護等用に購入する際にも、それに先立ってそうした施設や病院の専門家の指導や助言を仰ぐ場合が多いであろうことは推認するに難くない。そして、その小売価格も一〇万円前後の価格帯の商品が中心を占めるなど、相当に高額な商品である(甲第一八号証、弁論の全趣旨)。したがって、この種商品の取引者又は需要者は、その購入の決定に当たっては、当該製品の見た目の外観よりも性能等を重視し、他で目にした床ずれ防止用のエアマットレスの形態の記憶に頼るのではなく、カタログやデモンストレーション等によって性能や使い勝手を確認し、製造者や機種等も確かめた上で商品を選択し購入するものと認められる。そうすると、以上のような床ずれ防止用のエアマットレスの商品としての特徴及び取引の実情に照らして考えると、その取引に際し購入者が重視し注意するのは、製品としての機能や価格であり、形態や色彩によって商品を認識するものでもなければ、形態や色彩によって購入の意思を決定するものでもないと認めるのが相当である。

また、原告製品の使用時における外観形状は別紙物件目録(二)添付の写真のとおりであり、原告が商品表示性を取得したと主張する、横長で円錐台形状(鼓状)のエアセルを、縦方向に一六本配列し、そのエアセルをホックでベースシート上に固定し、それらのエアセルとベースシートをいずれも茶色に彩色しているという、原告製品の形態及び色彩は、その発売前から市場に出回っている床ずれ防止用のエアマットレスのそれと対比しても、さほどに独創的なものではなく、顕著なものともいえない(甲第一七号証~第二〇号証、弁論の全趣旨)。さらに、英国ターレイ社の製品が日本市場で初めて発売された時点から数えても既に二〇年以上が経過し、急速にいわゆる高齢化社会を迎え老人介護が大きな社会問題として浮上するに従い、我が国における床ずれ防止用のエアマットレスの市場は、市場規模が益々拡大して多数の後発メーカーが次々と参入し競合する成熟段階に入り、各社の製品の基本形態及び色彩は相互にかなり類似しているものと認められ、かように多くの類似周辺商品が存在する場合には、商品の形態及び色彩に独自の商品表示力を見いだすのは極めて困難であるといわざるを得ない。したがって、取引者又は需要者は、右のような紛らわしい多数の商品が競合的に存在する取引の実情の下において、原告製品を含めて現在市場に流通している各社の商品を見たときに、それぞれ別個の企業の商品であることを示す特徴的な形態及び色彩の違いが存在するものと認識することは困難であると認められる。

次に製品の販売状況について検討すると、前記認定のとおり、原告の床ずれ防止用のエアマットレス商品自体、旧製品が原告会社から製品を購入した会社が自社の企画・製造・販売する商品として、しかも会社によっては原告会社とは別の商品名をつけて販売していたのであるから、需要者としては、同一又は類似の形態及び色彩の製品が多数の業者を出所として販売されていると認識し得るにすぎず、原告の床ずれ防止用のエアマットレス商品の形態及び色彩を具備する物が、特定の企業ないしは何らかの事実関係、契約関係等によって関連づけられる企業から発売されていると認識する可能性は少なく、形態及び色彩により原告の床ずれ防止用のエアマットレス商品の出所を他の商品の出所と区別することは困難であったと認められる。もっとも、前記認定のとおり、有限会社ケープトレーディングリミテッド、株式会社ケープトレーディング、岡島産業、ドリーム特販、及び帝国臓器(昭和五七年一二月まで)が販売していた旧製品には甲第二号証の2のラベルが、帝国臓器(昭和五八年一月以降)が販売している旧製品には甲第二号証の1のラベルがそれぞれ貼付されており、それらには、「PRODUCED BY CAPE TRADING LTD. UNDER LICENCE FROM Talley Medical Equipment Ltd. ENGLAND」の表示が存在するが、右各ラベル自体、その大きさは旧製品全体の大きさと比較すれば、ごく小さなものであるだけでなく、全文英文表記であるうえ、通常の用法に従って旧製品を使用する場合、枕がその上に置かれて隠れてしまう位置に貼付されており、しかも、肝心の原告会社の製造にかかる商品であることを示す、「CAPE TRADING LTD.」の部分は、太字になっているとはいえ、縦約一・二センチメートルほどのごく小さなスペース内に記載されているにすぎないから、取引者又は需要者の注意を惹くものではなく、また右各ラベルの表示によって原告会社が旧製品の製造元であることを認識することは殆ど不可能である。結局、旧製品は、原告会社がその製造販売を停止した昭和六二年までは英国ターレイ社製又は帝国臓器製の製品として、それ以降は帝国臓器製の製品として市場で販売され、取引者又は需要者の間においてもそのような製品として認識されていたものと認められる(乙第一号証の1・2〔株式会社ケープトレーディング〕、第二号証〔岡島産業〕、第三号証〔ドリーム特販〕、第四号証の1・2、第二一号証、第二二号証の1・2、第二三号証の1・2〔帝国臓器〕の各旧製品のパンフレット及び甲第一九号証、第二四号証、第五三号証、乙第一一号証の3の各旧製品の紹介記事)。そして、原告が英国ターレイ社に多額のロイヤリィティーを支払ってまでもこのような販売方式を採用し、「リップルベッド」の名称使用を踏襲したのは、国際的に著名な英国ターレイ社や国内の医療用機器の有力メーカーである帝国臓器の社名を前面に出し、それらの企業の製品として旧製品を販売することにする方が、業界にスムーズに参入することができるとの販売戦略上の配慮に基づくものであったと推認される。したがって、原告会社が新たに昭和六二年に原告製品の製造販売を開始した時点において、市場における旧製品の販売状況は上記のようなものであったのであるから、新規参入品である原告製品の形態及び色彩が、原告の商品であることを示す表示として取引者又は需要者間に認識され、商品表示性を取得するためには、右形態及び色彩が、旧製品との関係でも独自の特徴を具備し、それによって商品の出所識別が容易に可能なものでなければならないと解される。ところが、そのような観点から原告製品の形態及び色彩と旧製品のそれを対比すると、旧製品は、原告が商品表示性を取得したと主張する、横長で円錐台形状(鼓状)のエアセルを縦方向に配列し、そのエアセルをホックでベースシート上に固定し、それらのエアセルとベースシートをいずれも茶色に彩色しているという、原告製品の形態及び色彩の特徴点を既に全て具備していたのであり(検甲第一号証の1~4)、エアセルの本数の点で差異(一四本と一六本)があるにすぎない。しかしながら、交互膨縮型の床ずれ防止用のエアマットレスにおいて、横長の略円筒状のエアセルを縦方向に偶数本配列することは、この種商品の交互膨縮の機能に由来する公知の慣用手段であり、原告が強調する程度のエアセルの本数の差異(一四本と一六本)は、看者の視覚には強い印象を与えず、それ自体から商品の出所を識別することは困難であると認められるのみならず、原告もこれまで旧製品時代を通じてそのようなエアセルの本数の特徴点に焦点を当てた製品の宣伝広告活動は積極的には展開してこなかったものと認められる(弁論の全趣旨)。したがって、以上の諸事実を総合すると、エアセルの本数の点を含め、原告製品の形態及び色彩が、旧製品と比較して新たに商品表示性を取得したと誇るに足りる独自の特徴を具備しているものとは到底認め難い。なお、原告は、旧製品と原告製品は、〈1〉 エアセルの本数に差異があるため、個別のエアセルの大きさが異なる点、及び、〈2〉 旧製品は白色の送風チューブがエアマットレスの上部に縦方向に直線で目立つ状態で取り付けられているのに対し、原告製品では送風チューブは全く目立たない位置に取り付けられている点において相違する旨主張するが、それらの点は、床ずれ防止用のエアマットレス商品において、機能上さして重要な部分ではないし、視覚上も特に取引者又は需要者の注意を惹く部分であるとは認められず、それらの部分の形態の差異によって商品の出所識別をすることは困難であるといわざるを得ない。したがって、右〈1〉・〈2〉の形態上の差異の存在は、前記認定判断を左右するには足りない。

以上の認定判断を総合すると、原告代表者個人がドッドウェルにおいて英国ターレイ社製品の日本市場参入に中心的役割を演じ、その後も同人が設立した原告会社が国産品の市場開拓に貢献した事実は否めないとしても、原告が製造販売している原告製品の原告主張の形態及び色彩が、原告の商品表示として取引者又は需要者の間に広く認識されるに至ったものと認めるのは困難であるといわざるを得ない。

二  結論

よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。

(裁判官 小澤一郎 裁判官 本吉弘行 裁判長裁判官庵前重和は転補につき署名押印することができない。 裁判官 小澤一郎)

物件目録(一)

〈省略〉

エアセルは、上記の通り横長で、円錐台の形状を成している。これを縦方向に一六本配列して、ホックでベースシートに固定したのが、被告、製品である。この、エアセル・ベースシート・及び送風チューブは、共に茶色である。尚、各エアセルの上面中央部に、二ないし四個の微細孔が設けられている。

物件目録(二)

〈省略〉

エアセルは、上記の通り横長で、円錐台の形状を成している。これを、縦方向に一六本配列して、ホックでベースシートに固定したのが、原告製品である。この、エアセル・ベースシート・及び送風チューブは、共に茶色である。

(別紙図面)

〈省略〉

(一覧表)

販売会社 商品名 カタログの表示 カタログの説明 ラベルの表示(原告主張) セルの色・形・本数・方式 エアポンプの表示

(有)ケープトレーディングリミテッドケープトレーディング(株) リップルベッド 製造元英国ターレイ社輸入総発売元ケープトレーディング(株) 床ずれに対する予防・治療の研究成果を踏まえ、専門的な立場で技術開発に取り組んできた英国ターレイ社が、新しく設計した床ずれ予防・治療システムです。 RIPPLEBEDFOR BED-SORE THERAPYFrusto-Conical Cell MattressPRODUCED BY CAPE TRADING LTD.UNDER LICENCE FROM Talley Medical Equipment Ltd.ENGLAND 茶色鼓型14本波動式 英国ターレイ社製(色・形・表示は甲3、乙1-1、2御参照)

(株)岡島産業 リップルエアーマットレス MADE IN ENGLAND 英国ターレイ社が、特に日本の療養者向けに新しく設計したエアーマットレスです。 同上 同上 同上(甲3、乙2)

ドリーム特販(株) リップルベッド 製造元英国ターレイ社発売元ドリーム特販(株) 英国ターレイ社が、日本における病院・施設等の現場のご意見や、ご要望を反映し、特に日本向けに新しく設計した理想的なエアーマットレスです。 同上 同上 同上(甲3、乙3)

帝国臓器製薬(株) リップルベッド 不明なるも、製造元英国ターレイ社と表示していたものと推定される。 不明なるも、上記各説明と同旨の説明をしていたものと推定される。 同上 不明なるも上記と同じと推定される。 不明なるも上記と同じと推定される。

RBエアマットテイゾー 国産品でないことを表示している。 (上記同旨の説明はしていない。) RBエアーマットテイゾー発売元 帝国器製薬株式会社〒167東京都港区赤坂二丁目五番一号(東邦ビル)(電話)03(583)8361〈代表〉PRODUCED BY CAPE-TRADING LTD.UNDER LICENCE FROM Talley Medical Equipment Ltd. 茶色鼓型12本・14本・21本22本・26本波動式 同上(乙4-1)

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